ブランドのイメージ統一とデザインの統一とは、
似て非なる別モノ。
デザインは有形で視覚認識できるが、
ブランドは「無形の資産」であり、可視化できない。
このパラドックスを捉え、
ブランディングの本質を解き明かしていきます。
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1. デザイン統一とブランドイメージ統一の違い
デザイン統一は表向きの器(うつわ)や箱物(はこもの)のデザインをきれいに統一させること。
ブランドイメージの統一とは内面の精神や価値観を反映し、
その結果、社会や市場の人々に、好感という心理作用を発生させるため、
普遍的な統一を目指す行為と言えます。
言うなれば、
デザイン統一が「モノ」思考であり、比較的ライト感覚な統一の取組みなのに対し、
ブランドイメージの統一が「コト」思考であり、
市場・業界、顧客・ユーザーを意識し、企業の強みや差別性に深く切り込むものです。
このように別物と捉えられる両者ですが、
実は以下のようにそれぞれを段階的に、また一体的にうまく運用すると大変効果的です。
その一つは企業のブランディングに対する意識の成熟度によって、
取組みのあり方を変える手法です。
まずブランドイメージの統一行為に経験度の浅い企業の場合、
事始めにデザイン統一から着手し、
段階的にブランドイメージ統一へ進化させていく運用方法です。
一方、その意識に一定の成熟度のある企業の場合、
両者を一体化させた運用が、その効果を最大化させることにつながります。
この件はこのBLOG記事の中で、順次語っていきます。
2. デザイン統一の効果
ではまずこのデザイン統一について、そのメリットをご説明します。
企業における日常的な広報媒体や広告を例にとると、
例えば企業広報におけるメディアやツールという視点で見てみます。
その広報メディアやツールとして、
コーポレートサイト、会社案内、IR関連制作物、企業動画を中心に、
名刺、封筒なども含まれます。
このメディア・ツールの中でどれでもいいのですが、
例えば会社案内を最初に制作したとします。
この会社案内のデザインを踏襲した、コーポレートサイトや企業動画のデザイン、
名刺や封筒に至るまで、
色調、デザイン性、素材・パーツを統一させます。
それは前述した「モノ」思考によるところです。
ただこれら各メディアやツールを一堂に集約すると、
何と、美しささえ感じてしまうほどです。もちろんそのセンスの良さは前提となりますが…
つまりそのオモテ向きのデザイン統一で、
それらの媒体やツールに触れた、見た、顧客や市場のユーザーは、
その企業は社内統一概念の下、デザインのトーン&マナーがきちんと管理され、
社内統制が効いている企業なんだ!
と意識の中で感じられるものです。
その結果、
当該企業の製品やサービスの品質は優れている…
取引パートナーとしての適性がある…
とまでは確定的にはいかないものの、
潜在意識の中で何らかの優位性を持つことは十分あり得ることだと言えます。
余談ですが、
よく見受けられるのが、CI・VIマニュアルはあるものの、
社内の広告物、広報制作物の制作が各部門、拠点組織に委ねられ、
一元管理されていない企業において、社内の全制作物を一堂に集めた場合、
それはもう、見事に?これが一つの企業のモノか!
と見紛うほどのバリエーションになっていることは、
特に珍しいことではないようです。つまりバラバラですね…
そういう意味でも社内の隅々までデザイン統一することだけでも、
まずは企業イメージの大きな改善になることが、
おわかりいただけると思いますし、
この点だけ実行するだけで、対外的イメージは随分と良くなる可能性があります。
すぐに実行できますので、今からでも是非どうぞ。
参考までに、以下の会社案内とコーポレートサイトの弊社制作実績をご覧ください。
以下のWebモニターはスクロールでご覧ください。
3. ブランドイメージの統一効果
ではブランドのイメージ統一の効果に進みます。
前段でも少々述べた通り、このブランドイメージの統一は「コト」思考であり、
デザイン統一と比較して、業界や競合、また市場の顧客やターゲットユーザーを意識し、
企業・製品・サービスの強みや差別性に深く切り込むものです。
さらにこのブランディングは、
営業、広報、IR、採用、社会・環境活動…等までも視野に置き、
企業・製品・サービスの独自性はじめ、差別性、優位性を表すための企業の取組みですが、
イメージの統一によって実現します。
それはブランドのコンセプト、プロミス、バリュー、ビジョン、ミッション…、
またターゲットやペルソナが明確に定義され、それらを根拠に、
統一的なブランドイメージが形成されることにより実現されます。
このことにより、前述「デザイン統一」とは大きく異なることがお分かりと思います。
それらの精神や価値観を統一概念とした広報・広告のメディア・ツールが、
オモテを共通メイクアップしたデザイン統一とは、
その奥深さに違いがあるからです。
しかしながら、このブランドの悩ましく、厄介なところは、
「無形の資産」という概念であるというところです。
それ自体にモノがあったり、視覚認識ができるものではなく、
あくまでも人々の心理や気持ちの中に作用する要素だからです。
そこでそれを人々に見える化するのがデザインの役割です。
4. ブランドイメージを可視化する『デザイン統一』
つまりそのデザインのミッションは、ブランドイメージの可視化であり、
デザインの統一化でブランドイメージを普遍的に伝播させることを可能とします。
この「無形の資産」をいかに的確にデザイン表現し、
さらに企業の広報や広告媒体にその統一デザインを反映させるか?
これによって企業と、社会マーケット、顧客やユーザーとの接点を、
統一したブランドイメージとして運用・認知させることとなります。
逆に統一したブランドスピリットや価値観が、
アウトプットとなる媒体やツールのデザイン統一に活かされない限り、
「ブランド統一=デザイン統一」とはならず、
企業ブランディングの構築に取組んだものの、
期待効果につながらないことがあることは、容易に理解できると思います。
このデザイン統一要素に加え、
コーポレートスローガン、ブランドメッセージ、タグライン等のコピー表現、
キービジュアル、キャラクター、タイポグラフィ等のクリエイティブがありますが、
ここではブランディングのコアな要素に含まれるものと解釈します。
ブランディングには取組んだものの、
期待する効果が得られない場合、
アウトプットのデザイン品質と統一範囲を、もう一度見直してみるのも一案かと思いますし、
一方で自社の媒体やツールが全て同類デザインに統一する必要があるかと言えば、
それはNoです。
むしろそこには根底に宿るブランドイメージを踏襲させれば、
デザイン統一を超え、TPOによってはカタチを変えることすら許容するものです。
なぜなら広報活動、営業活動、製品・サービス情報、採用活動、IR情報など、
活動シーンや情報の属性によって異なるし、
また事業形態がBtoBなのか、BtoCなのか、BtoGなのか、
ターゲットとなるユーザー属性によって異なるためです。
これらの要素によって運用がきちんと管理・統制されてさえいれば、
少々アウトプットの媒体やツールのデザインに違いが出ても、
さほど影響はありません。
むしろそこは、弊社のようなベンダーの腕の見せ所とも言えます。
5. 企業イメージの統一【CI】との関連性
さらにこのブランド統一とデザイン統一の根底には、
CI(コーポレート・アイデンティティ)が存在します。
CIはご存知の通り、企業理念や使命・ビジョンを統一して表した概念ですが、
それを構成する要素の一つとして、
視覚の統一を表したVI、つまりヴィジュアル・アイデンティティがあります。
この代表格が企業ロゴ、社名ロゴタイプ、
タグライン等のコーポレートメッセージ、コーポレートカラーやその他の視覚的な要素も含まれます。
このようにCI・VIは企業の絶対的価値観を表したもので、
言わば企業のDNAとも言えます。
ただ、いかがでしょう?
市場や顧客・ユーザーを対象として、相対的な価値を主張するブランディングとは言え、
その根底に企業DNAを含めない訳にはいかないのではないか?
含めなければ、恐らく、うわべだけの形式的なブランドになってしまうでしょう。
そういう意味ではブランドイメージ統一に、
CI、つまり企業イメージの統一がその根底を形づくるからこそ、
その企業独自の個性やオリジナル性が発揮できるのだと考えられます。
言い方を変えれば、
強い体幹、健康な臓器があってはじめて、筋肉は力強く、しなやかな動きをし、
健全な精神と豊かな教養を発揮できる。
精神論のように聞こえますが、これは別にオーバーな表現ではなく、
むしろブランディングというのは、
人々の情緒や心理に作用させ、好感や差別的優位性を醸成しようと言う企業活動ですから、
これが本質を踏まえたブランドという資産の姿と言えるでしょう。
6. 意外と身近にできる統一デザインづくり
ここまで縷々述べてきましたが、
この章ではもう少し日常的、身近なレベルで取組む、
或いは比較的手軽に「無形を有形化する」デザイン統一についてご紹介します。
ただし同じデザイン統一をするなら、
この記事で語ってきた要素を少し含めた視点で、
そのポイントを解説してみます。
ブランドイメージを反映したデザイン統一
マーケティングの理論的分析に、
「3C分析」「STP分析」「SWOT」などがありますが、
企業ブランディングの導入には、このようなマーケティング分析を要します。
そのうちの「3C分析」は、市場・顧客、競合、自社をリサーチ・分析する手法ですが、
この中の一部となる「自社:Company」の要素を取り入れ、
自社の現状認識をしてみます。
主観を排し、客観的に今一度足元から見直して見ると、
意外と気づかなかった、新たな切り口での自社が見えてくることがあります。
もちろんその実務は私たちの仕事になりますが。
例えば、見えてきたインサイトから、
自社の特徴イメージをキービジュアルと言われるシンボリックなデザインに表し、
そのデザインをリニューアルするコーポレートサイトと会社案内の共通イメージとする。
また、自社製品の強みを市場に伝えるプロダクトメッセージを新たにつくり、
そのメッセージをタイポグラフィと言う文字デザインにします。
これを製品パンフレットの表紙に、製品動画のプロローグに、
また企業サイト製品情報のトップイメージを飾る。
等々がその代表的な例と言えます。
CIを反映したデザイン統一
これは結構シンプルな参考例です。
企業ロゴマークをモチーフにし、共通イメージとするビジュアルを策定。
そのビジュアルを企業広報媒体、例えば会社案内、コーポレートサイト、企業案内動画、
さらに名刺や封筒のデザインにも反映させる。
ただこれには前提があります。
企業ロゴのコンセプトや取扱い基準を記した、
VIマニュアルの規定に準拠させる必要があります。
マーク自体に一切編集できない規定がある場合は、この限りではありません。
7. ブランディングの取組み
この記事では主にデザイン統一とブランドイメージ統一という視点で語ってきましたが、
元来ブランディングは統一概念はもとより、
その上流となる導入動機・目的、それに向けたリサーチ・分析、
そこで得られた要件や、それに基づき策定されたコンセプトから、
統一概念を踏まえた媒体・ツール計画、その投入後の運用まで。
何度も同じことを言ってますが、
可視化できない無形の資産を人々の心に宿すこと、
その効果を発揮すると言えます。
最後になりますが、
ブランディングをテーマ別にもう少しご紹介しておきます。
企業ブランディング
主に多目的な企業広報を視野に、広報、営業、採用、IRなど、
企業活動全般でその効果を発揮することが狙い。
インナーブランディング
自社の価値ある無形資産を、社員さらにその家族までも視野に、
企業へのロイヤリティを高め、そこで高めた社員のモチベーションをもって、
対外的なサービス・対応力向上に活かす取組み。
採用ブランディング
採用難の時代に、良質な母集団形成、内定辞退削減を狙いとし、
独自の採用コンセプトから、採用メディア・ツールの投入計画を策定、
弊社では企業経営レベルで取組むブランディングを提唱。
学校ブランディング
少子化の環境下で、学校独自の取組みや他校との差別性を、
ターゲットの生徒やその父兄にまで発信力を高め、
いかに選ばれる学校を目指すかがその主旨。
BtoBブランディング
企業間取引を目指す製造業、商社、建設・不動産、ICT…等、
企業・製品・サービスの独自性・優位性を追求するもの。
プロダクトブランド
特に製造業において、自社製品の有用性、差別的優位性を明確にし、
ターゲットへその価値を伝播するスキームを確立する。
その他、様々な目的や動機でブランディングは存在します。
もしもう少し踏み込んで、或いはこの際本格的に、
といった具合にブランディングを取り組んでみたい、というご要望があれば、
弊社でご相談を承っていますので、どうぞお気軽にお問合せください。